私には絶対音感があります。しかし自慢でも何でもありません。小さい頃からヴァイオリンを習っていた為に自然と身に付いたもののようです。ですからヴァイオリンのチューニングの基音のA(ラ)の音はおおよそ443Hz位にチューニングできます。機械の回転数も、電卓があれば音で回転数を聞き分けられます。この話を人に言うと「すごいね」とか言われますが、実際便利だと思ったことは全然ありません。世の中には「絶対音感トレーニング」なるものが存在し、幼児教育や英才教育に取り入れられているようですが、全くの無意味です。無意味な理由は・・・・・
先日、三叉神経痛の発作が起こりました。左目の下に激痛が走ったので、風邪による急性副鼻腔炎になったのかと耳鼻科専門医の診察を受けましたが、レントゲンの所見等に炎症反応が見られないことから、第二肢の三叉神経痛とのことでした。その治療薬として”テグレトール”という薬を処方されました。この薬を処方された時に医師からは「ふらつきや目眩などの副作用があるかもしれない」と聞いていましたが、実はこの薬、神経伝達速度を遅くする作用があるので「音が低くなる」という副作用を持ち合わせていたのです。朝晩二回の服用で、その副作用はてきめんでした。
翌朝目を覚ますと、ヨメさん、子供の声、目覚ましの音、車の音、遮断機の音、会社のチャイム、とにかく何でも音が低く聞こえるのです。全く夢の世界にいるような感覚でした。ちなみにクラビノーバ(電子ピアノ)で確認してみると、何と25Hz(約半音)低く聞こえている事が判明しました。おかげで気分が悪く、立ってもいられなかったので会社を休みました。
この経験から学んだことは、”絶対”音感というのは単に脳の記憶部位にある特定の周波数の音が記憶されているだけの能力である、ということでした。ある意味特殊な能力なのかもしれませんが、私のような事例でセンサ(この場合は聴覚神経)に異常を来せば却って人間のメンタル面に害を及ぼす危険性すら孕んでるということが非常に恐ろしく思いました。(幸いこの薬の服用を中止し、四日ぐらいで元に戻りました)
その他にもバロックチューニングの音楽を聴くと何か変な感じがする(これは克服、むしろ最近は好んで聴いています)、などあまり自慢などする能力ではないと思います。せいぜい宮崎アニメの「耳をすませば」で、主人公と友人、そのおじいさん達と音楽仲間で演奏するチューニングが「バロックチューニングだな・・・」とわかる程度でしょうか。(これがわかれば相当な能力と”知識”がありますね。)
最近、音楽をやる上で必要なのはむしろ”倍音”を聞き分ける能力が非常に重要と思っています。絶対音感教育を受けてきた人にはむしろこの感覚に欠けている人が多いようにも感じます。ドとソの和音を聞いてその一オクターブ上のドを聞き分ける、この能力は必須です。これについてはまた後日。