随分前の記事にコメントを頂きました。
折角面白い話題を提供頂いたので、記事にしますね。Mariさんありがとうございます。m(_ _)m
「morinokuma3715様
Mario Gaddaを所有されているとのことでしたのでブログを拝見させて頂きました。3人の師弟の作品が揃 うとは大変珍しいことですね。私は他の方のブログでMario Gaddaを知りましたが、その方の楽器には裏のボタンに刻印が在りました。 morinokuma3715様の楽器にもその様な刻印が在るのでしょうか? その作者は師匠の刻印を使う事もあったと聞いています。いったい何種類の刻 印を使っていたのでしょうか。もしご存知でしたら教えて下さい。最近、刻印のあるヴァイオリンに関心があります。どうぞよろしくお願い致しま す。(Mari)」
私の楽器、詳しく皆さんに紹介したことは多分なかったですね。なので写真付きでコメントします。
結論から言うと、私の楽器には「GG」という刻印があります。もちろんGGはGaetano Gaddaさんのことです。

ついでにラベルを見てみましょうか?一枚の写真に収めるのは至難の業だったので、2枚に分けてます。


ラベルの意味は「MantovaのGaetano Gadda、Stefano Svarampellerに最も愛された弟子の作」という意味です。
このラベル自体は実際Gaetano Gaddaさんがよく用いていた表記でどうやら2種類あるそうです。
(昔、ネットで調べたけれどURLを忘れました。)
では、この刻印は?
これは、Gadda父子の伝統らしいです。
他の制作家でも同じような刻印(焼き印)を見かけることがありますが、主たる目的は「自分の楽器のコピーは作らせない」という意味です。要は牛に焼き印いれるのと同じですな・・・(笑)
1900年代はヴァイオリンのネック部分に刻印を入れるのが流行ったらしいですが、簡単に真似されてしまうので、(多分)今は、楽器の中に刻印を入れることが多いようです。
で、Gadda一族(父ちゃんGaetano、息子Mario)は逆に「コピーをした」という証に焼き印を入れています。
私も写真集でしか見たことないですが、彼ら(父子)の作品には「GG」のほか、「SC」というのも存在しています。これはもちろんGaetanoさんの師匠、S.Scarampeller氏の楽器のコピーという意味です。Scarampeller自体は自分の楽器に刻印を入れていません。
またGaddaさんもご自身で制作された「オリジナルの形状」のものには刻印を入れていません。
(Marioさんの楽器にはMGの刻印が入っているものがありますが、これは弟子に制作させたものに入れているという話をききました。)
実は私の楽器と同年頃に制作されたGaetanoさんの楽器は、海外のヴァイオリン写真集に掲載されています。色は違いますが形はそっくりです。この本は知人のものなので、書名を忘れました。今度きいておきます。
さて、私の楽器は1950年代のものですが、当時Gaetanoさんは脂ののりきった一番凄腕の頃、息子のMarioさんはまだ10代だったはずです。
刻印がGGなのに何故Marioさんの楽器だと言えるのか?
この話、実は私の楽器を購入した神戸/南京町のA.H.というお店のKさんから伺いました。
私の楽器、すごくパフリング(象眼細工)がへたくそで、明らかに修行中の職人が制作した、とわかるほどの出来です。で、購入時楽器屋さんに「この楽器、すごくいい音するけれど、細工がへたくそ。著名な制作家&値段もそれなり、なのに何で?」と聞いてみたところ、前述の蘊蓄を教えてくれました。
Kさん自身はMarioさんに実際にお会いして、その話を聞いたのだそうです。(もちろん、私の楽器のこともMarioさんは知っていたらしいです。)
残念ながら私の楽器には鑑定書はありませんが、多分Marioさんは作成してくれないでしょう。なぜならやはり「修行期」に制作した楽器だから。
でもやっぱり楽器は音が大切なので、真贋や作りはあまり気にしていません。
刻印ついでに、他の紹介もしておきましょう。
↓は私の弓。これはF.Lotteというフランスの職人さんのものです。多分1900年頃のもの。当時は腕の立つ職人がフランスに多かった&良質の材料が手に入った、ということから、この時代の弓は現在でも相当人気です。
Lotteさんの弓もピンキリの値段がありますが、私のは比較的安い方です。(ちょっと細工が荒いです。)

↓これはバロックヴァイオリン。F.クイケンさんの作で1999年製です。まだクイケンさんが埼玉でなく、東京に工房を構えていた頃の作品ですね。

彼の楽器には刻印は一見ないように見えますが・・・・?よく見ると「・」の刻印があります。
これ、最初は木目か傷かと思っていたのですが、東京の弦楽器フェアで彼の楽器を見たら軒並み入っていました。多分これこそ「コピー防止」の刻印なんでしょうね。

ついでに、、、、
海外の「著名な」あるいは「そこそこ著名な」製作家の楽器はそれ相応の値段がします。
でもサザビーズなどのオークションでは驚くほど格安で手に入れることができるようです。
(私の楽器の製作者で80万ぐらいという実績を見かけた事があります。)
なら海外へ行って買い付けすれば良いのでは?と出かける御仁も多いと聞きますが私はオススメしません。
以前所有していた楽器は藤原さん(チェリストの藤原真理さんのお父様です。)が輸入したものでした。
彼曰く「国内の楽器店に並ぶ価格はオークション買い付け価格のおおよそ2倍以上。なぜなら輸入に伴う諸経費と日本の気候に合わせた楽器の調整代が含まれるから。」なんだそうです。
これを「ぼっている」とみるか「適正」と見るか?それは個人の問題ですね。
楽器の調整は・・・一般的に非常に高額です。
それを覚悟して&(オークションなので)見た目だけで判断して購入する勇気は私にはありません。
(実際にはオークションでは試奏させてもらえる場合もあるそうですが、現状渡しが原則なので本来の実力を持っているかどうかは「目利き」が必要なんだそうです。)
長文/乱文失礼しました。