2008年3月13日木曜日

タフトライド騒動

さて、皆さんはタフトライドという表面処理をご存知でしょうか?例えば車のエンジンのクランクシャフトなどに使われている、耐摩耗性能(等)に優れた表面処理の「登録商標」です。
俗に塩浴窒化処理とか軟窒化とか呼ばれていますが、JISに規定された用語では「炭窒化」と言います。
さて、このタフトライドを日本で取り仕切っている会社が昨年12月15日付で「イソナイト」という名称に変更するので、図面をイソナイトに直して欲しいという連絡が私の会社に今頃になって届きました。
人の良い技術者達は、「そうか名前が変わったんだ、なら直しておこう」と実行したようです。(我が社だけではないようです。)
でもちょっと待って!!タフトライドとイソナイトは「全く同じ」と言えますか?
私の所属する部門では図面に記入するスタンプの管理をしています。設計者から「スタンプを直して下さい」という依頼がありましたが、私の答えはNo。
たかが名前が変わっただけとは思わないで下さいね。いきなりイソナイトにして下さい、って言われても全く同じであるという技術的な根拠が示されなかったら信用できないでしょ?
私の下調べの結果
・タフトライド処理自体の製法特許は既に切れている。
・タフトライドの商標権はドイツの会社が持っている。(S36年に商標登録)
・日本の会社はその商標権を使う許可をもらっていた。
・イソナイトの商標権は日本の会社が持っている。(H4年に商標登録)
ねっ?おかしいでしょ?H4年以降、この会社ではタフトライドとイソナイト、二つの商標を使いわけていたんです。「普通に考えたら」得られる結果が同じでも、何かちょっとした製法の変更とかあるんと違う?と思わないかなあ。

早速メーカを呼んで調査開始です。(証人喚問のようだ・・・・)
結論から言えば「無罪」
確かにタフトライドとイソナイトは名称だけが違う商品でした。
歴史を紐解いてみました。
そのグループ会社が(何故かは知りませんが)イソナイトという商標で同じ表面処理を売り出した
→タフトライドの商標を使い続ける交渉が昨年決裂した
→仕方がないので従来から持っていたイソナイトの商標を使うことにした
ということらしいです。
確認のために、製造方法の方案書を提出してもらいました。
(この書類はまだ正式に受理したわけではないです。従ってこのブログを見られている方はもちろん自社の責任で確認をお願いしますね。ブログを見た、じゃあ何の根拠もないですから。)

私は一連のこの騒動で技術者の「危機意識のなさ」を危惧しています。たかが名称、されど名称。何か変わったら「何で変わったのか?」というところに思いを馳せない技術者、大丈夫?と言いたかったです。
ちなみにHPでタフトライド、と検索して数社でも覗いてみて下さい。「商標が変わりました」としか掲載していません。
こんなんで「技術立国日本」の将来は大丈夫なのかなあ???


余談:JISの用語も変わっています。要注意ですよ。
例えば
イオン窒化→プラズマ窒化
イオン浸炭窒化→プラズマ浸炭窒化
軟窒化→炭窒化
等・・・H12年に国際的に通用する名称にするため、変更したそうです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ふ~ん。タフトライドでなくなるんだ・・。

morinokuma3715 さんのコメント...

日本国内では・・・ですね。
もっともドイツの会社が日本に進出すれば「タフトライド」は出回るのかもしれませんが、今や炭窒化は寡占状態ですからねえ。